大腸がんとは
大腸がんは、結腸・直腸・肛門に発生するがんで、大腸ポリープががん化して発生するケースと、大腸粘膜に直接発生するケースがあります。日本人の大腸がんの約90%が良性ポリープから発生しており、発症数は年々増加しています。
女性では最も死亡数の多いがんであり、特に30代から徐々に増加し、50歳頃から急激に増えます。早期発見できれば完治する可能性があるため、定期的な大腸カメラ検査が重要とされています。
大腸がんの原因
大腸がんの主な原因として、高タンパク・高脂質・高カロリーな食事や食物繊維の不足が挙げられます。特に女性では、赤身肉や加工肉の過剰摂取がリスクを高めるとされています。また、運動不足、肥満、アルコールの過剰摂取、喫煙もリスク要因です。さらに、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群といった家族歴がある場合、大腸がんの発症リスクが高くなります。
大腸がんかもしれない…
気づくきっかけは?
大腸がんや大腸ポリープは自覚症状がほとんどないため、進行してから症状に気づくことが多い病気です。
便潜血検査
健康診断で行われる便潜血検査は、便中に血液が混じっていないかを調べ、腫瘍による微小な出血も検出できます。
血便
悪性腫瘍は栄養を得るために新しい血管を作りますが、これらの血管は脆く、便が通る際に損傷して出血し、血便として現れることがあります。
腹痛
特に下行結腸、S状結腸、直腸にできるがんでは、便の通過が妨げられ、腹痛やそれに伴う嘔吐が起こることがあります。
便秘と下痢の繰り返し
大腸には食物残渣に残る水分を吸収して便を形成する機能があります。大腸がんが進行すると、大腸の粘膜に常に炎症がある状態となり、この機能が低下してしまうことから下痢が起きやすくなります。
体重減少
がんによってたんぱく質や脂肪が分解されるため、生活に変化がなくても体重が減少することがあります。特に3~4kg前後の原因不明の体重減少が見られた場合は、早めに医師に相談することが重要です。
貧血
大腸がんでは病変部からの緩やかな出血が続き、知らないうちに貧血を引き起こすことがあります。
腸閉塞
腫瘍が大きくなり、腸管内で便が通れなくなると、腹痛や嘔吐などが起こり、緊急手術が必要になることがあります。
初期症状がない!?
大腸がんの症状チェック
- 血便あるいは便潜血検査の陽性
- 便が細くなったり、小さい便が多く出る
- 便秘と下痢を頻繁に繰り返すようになる
- 腹痛や腹部膨満感がある
- 食欲低下や体重減少がある
- 便をしてもまだ便が残っている感じがする
- 貧血が続く
など
大腸がんは、初期症状の少ないがんです。よく見られる症状は血便ですが、「痔」と思い込み放置してしまうケースが少なくありませんのでご注意ください。
大腸がんの検査
大腸がんが疑われる場合には、以下のような検査を行います。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)
肛門から内視鏡を挿入して大腸の粘膜を直接観察し、病変の位置や範囲、形状、色などを正確に確認できます。また、その場で細胞を採取して病理検査を行ったり、がん化の恐れがあるポリープを切除したりすることも可能です。大腸がんや他の大腸の病気を早期かつ正確に発見するために、最も有効な検査です。
便潜血検査
便潜血検査では、肉眼では分からない少量の血液でも反応があり、大腸がんの症状が現れる前に陽性が検出されることがあります。ただし、陰性判定は大腸がんやポリープがないことを証明するものではありません。また、陽性判定が出た場合には、精密検査として大腸カメラ検査を受ける必要があります。
病気の判定と治療方針決定に必要な検査
以下のような検査を行い、腫瘍の有無や、進行具合、転移の有無等を検査し、病気の診断と治療方針を総合的に判断します。
注腸検査
肛門からバリウムを注入して大腸を膨らませ、X線検査を行います。この検査では、画像を基に腸の狭窄の程度やポリープ、がんなどの腫瘍の有無を判断します。
腹部超音波検査
大腸がんを発見するためではなく、進行の程度、転移の有無の判定のために行われる検査です。
腹部CT・MRI検査
この検査は大腸カメラ検査と併用されることが多く、大腸がんの転移の有無を含む総合的な診断に役立ちます。
大腸3D-CT検査
この検査は主に大腸カメラ検査が難しい場合に行われ、内視鏡検査に近い3D画像を取得して診断します。また、服用する下剤の量は大腸カメラ検査よりも少なくて済みます。
PET検査
がん細胞は健康な細胞よりも多くの糖分を消費する特性を利用した検査です。この検査では、投与されたブドウ糖に似た薬剤の動きを調べます。
大腸がんの治療
早期がんと進行がんでは治療方法が異なります。当院では早期がんの内視鏡による切除に対応しております。
早期がん
早期の大腸がん(粘膜内または粘膜下層にとどまる場合)では、通常は内視鏡による治療(大腸ポリープ切除)が行われますが、がんの範囲が広い場合は手術が選択されます。
日帰り大腸ポリープ切除は、大腸カメラ検査中に発見されたポリープをその場で切除する手術で、入院せずに帰宅できます。切除は通常5分程度で行われ、痛みや不快感はほとんどありません。
進行がん
進行した大腸がんでは、がんが固有筋層を超えて浸潤し、周囲の血管やリンパ管への浸潤やリンパ節への転移の可能性が高くなるため、手術による治療が必要になります。また、転移が認められる場合は、抗がん剤による化学療法が必要になることもあります。
大腸がんの生存率
がんの統計の1つに「生存率」があり、これはがんと診断されてから一定期間後に生存している割合を示します。大腸がんの相対5年生存率(他の病気による死亡を除いた生存率)は、ステージIで94.5%、ステージIIで88.4%、ステージIIIで77.3%、ステージIVで18.7%とされています。